実家の土地の相続人がブラジル人25人を含む40人だった事例

国際相続 - ブラジル人の場合

事例の概要

関東在住の男性からの相談でした。
兄が実家を継ぐことになったが、土地の名義が50年前に他界した祖父のまま変更ができない、とのご相談でした。
ご事情を伺ったところ、お祖父様は再婚後に亡くなり、その後妻さんが相続権の一部を持ったまま亡くなったが、後妻さんのご兄弟がブラジルに移民しており、現在の相続関係がどうなっているか、正確にはわからないとのことでした。
亡くなったお父様が生前、地元の司法書士に手続きを依頼したそうですが、結局、途中で断念されてしまったそうです。

相談者40代の男性
被相続人相談者の祖父
相続人日本側の相続人は戸籍により15名と判明していたが、ブラジル側の相続関係の詳細が不明。
ブラジル側相続人の一部の名前が書かれた、お父様のメモが残っていた。
ある相続人の夫が日本人(移民一世)で、お父様はその方を通じて話していた形跡がある。
相続財産不動産(土地)
何が問題だったか時間の経過とともに、後妻さんの兄弟姉妹も死亡していると思われ、その子供や孫たち多数が相続人となっていると思われるが、相続関係が把握できていない。
相続人の連絡先も不明であり、また、日本語が通じず、ポルトガル語でやり取りしなくれはならない可能性が高い。
相続人が判明したとして、全員に連絡が付き、さらに手続きに協力してもらえるかが不明。
どう解決したか最初に、サンパウロ市内にある日本人会(県人会)に連絡して日本人の親戚に連絡を取り、窓口となって協力してもらえる相続人を紹介してもらった。
窓口となるブラジル人相続人は、公認会計士で、相続手続きにも詳しく、彼の話から詳細な相続関係を特定することができた。
結果、ブラジル側の相続人は全部で25名いることが判明。窓口の方から一族用のSNSで他の相続人に協力を要請してもらった。
当方でポルトガル語の宣誓供述書(遺産分割協議書)を作成して、ブラジル側に送付し、各相続人に公証人の認証を取ってもらった。
幸いにも多くの相続人が快く協力してくれたが、日本に出稼ぎに行った相続人のうち1名の連絡先がわからず、手続きはしばらく中断してしまった。
ダメ元でFacebookで検索したところ、ついに本人と連絡が取れ、日時を決めて、ブラジル領事館で待ち合わせし、宣誓供述をしてもらった。
以上、ご相談から約1年半かけて、50年ぶりに亡き祖父の相続登記を行うことができ、依頼者に大変喜んでいただいた。

問題点と解決の詳細

相続人の調査

本事例のように、相続人の半数以上が外国人であるというケースもあります。ブラジルには戸籍制度が無いため、大半の相続関係が確認できないことになります。
本件では、ブラジルで亡くなった相続人の死亡証明書を取り寄せ、それを親戚の話と照会して、相続関係図を作り上げて行きました。
弊所では、相続人が分からない場合でも、このような調査を致します。

相続関係の証明

まず、ブラジル国籍の相続人に、ご自身と被相続人との相続関係について、カルトリオ(Cartório)と呼ばれる役場で公証人の面前で宣誓供述をしてもらいます。
ブラジルには戸籍や住民票、実印と印鑑証明書のような制度はありませんので、この宣誓供述書によって、相続関係を証明することになります。

宣誓供述書(AFFIDAVIT)

「宣誓供述書」とは、本人が陳述した内容を公証人が認証し、公文書化した書面の事です。今回はブラジルで認証する必要があるため、内容はポルトガル語で記載します。
宣誓供述書に相続関係を証明する内容と相続手続きを委任する内容を記載して認証を受ければ、そのまま日本国内でブラジルの公文書として利用できます。
また、不動産の登記を行う場合には、宣誓供述書の内容につき、予め法務局に確認を取ることが必要です。
法務局の登記官には、それぞれ独自の判断が認められているため、事前に確認をしないと、登記が受理されず、宣誓供述書を作り直すことになるリスクもあるからです。
最終的には、法務局に事前確認した日本語の内容を英文化し、相続人へ郵送して、公証人による認証を受けてもらうことになります。

実際に手続きした内容

相続人から認証済みの「宣誓供述書」を送ってもらい、日本国内での相続手続きを行います。
今回は、「不動産の相続登記」を管轄法務局に申請し、ご依頼の業務は完了となりました。

まとめ

この事例においてのまとめは以下になります。もし同じ状況でお悩みであれば、ぜひ参考になさっていただければと思います。

  • 相続人の所在が不明なケースは多い。調査の方法はいくつかあるのでご相談ください。
  • 相続人が海外在住の外国籍の方の場合、相続関係を証明するために「宣誓供述書」が必要。
  • 「宣誓供述書」は外国の公証人の認証により、本人の供述内容が公文書化されるものであるが、使用目的に合わせて、提出先に事前確認し、文書を作成する必要がある。

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